プリン体の分析法について
プリン体の分析法について
一般財団法人 食品分析開発センターSUNATEC
第二理化学検査室
【はじめに】
近年、健康志向の高まりを背景に、食品中に含まれる成分に対する関心が高まっている。アルコール飲料に含まれる「プリン体」もそのひとつであり、尿酸値や痛風との関連から、多くの消費者に意識されている成分である。プリン体が多く含まれる食品を多量に摂取すると痛風発症のリスクが高まることが知られており、『高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン』には生活指導の一部として、「1日400mgを目安としたプリン体の摂取制限」が示されている1)。このため、食品中のプリン体含量を正確に把握することは、消費者の健康的な選択に資するとともに、食品関連事業者にとっても製品の差別化を図る上で重要である。
本稿では、プリン体について概説するとともに、アルコール飲料中のプリン体の分析法について紹介する。
【プリン体とは】
プリン体とは、プリン骨格を有する化合物の総称であり、プリン塩基、プリンヌクレオシド、プリンヌクレオチド、核酸が含まれる。食品中では核酸の主要構成成分であり、旨味の成分の一つとしても知られている2)。プリン体のうち代表的なプリン塩基の構造式を図1に示す。

図1. プリン塩基の構造式
【プリン体と痛風1)】
食事から摂取されるプリン体は体内で最終的に尿酸に代謝される。尿酸は健康な人の体内にも一定量存在し、血液や体液に溶解して循環しており、主に腎臓から尿中へ、一部は消化管から排泄される。しかし、何らかの要因で血中尿酸濃度が上昇し、飽和濃度を超えると、関節内や関節内組織で尿酸ナトリウム結晶となって沈着することで痛風関節炎を引き起こす。尿酸値を変動させる要因の一つに飲酒があり、アルコール飲料の種類によって含量に差はあるものの、プリン体を多く含むことが痛風関節炎の一因となるほか、アルコールが体内で代謝される過程で生成される乳酸が腎臓における尿酸排泄を阻害し、体内に尿酸を蓄積させることも知られている。
【アルコール飲料中のプリン体含量】
アルコール飲料中のプリン体含量を表1に示した。アルコール飲料の種類によってプリン体含量には大きな差があり、蒸留酒には少なく、醸造酒に多く含まれる傾向がある。醸造酒の中でも特に、「紹興酒」や黒ビールの代名詞ともいえる「スタウトビール」、地域に根差した「地ビール」などには10mg/100mL以上のプリン体が含まれているものがある。
表1. アルコール飲料のプリン体含量(mg/100mL)
| アルコール飲料 | プリン体 | |
|---|---|---|
| 蒸留酒 | ウイスキー | 0.1~0.3 |
| ブランデー | 0.4 | |
| 焼酎(25%) | 0.0 | |
| 泡盛 | 0.0 | |
| 混成酒 | 梅酒 | 0.2 |
| 醸造酒 | 日本酒 | 1.2~1.5 |
| ワイン | 0.4~1.6 | |
| 紹興酒 | 7.7~11.6 | |
| ビール | 3.3~9.8 | |
| スタウトビール | 5.7~12.0 | |
| 地ビール | 4.6~16.7 | |
| 発泡酒 | 1.1~3.9 | |
| 発泡酒(プリン体カット) | 0.0~0.2 | |
| 低アルコールビール | 2.8~13.0 | |
『高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン1)』より一部抜粋
【アルコール飲料中のプリン体の分析法】
アルコール飲料中のプリン体分析では、試料を酸加水分解処理し、すべてプリン塩基(アデニン、グアニン、キサンチン、ヒポキサンチン)に分解した後、それら4種類のプリン塩基を高速液体クロマトグラフ(HPLC)または液体クロマトグラフ質量分析計(LC-MS/MS)を用いて定量し、その総和をプリン体含量とする方法が用いられている3),4),5)。
近年、酒類業界ではプリン体を低減させた製品開発が活発に行われており、「プリン体ゼロ」商品が市場に出回っている。多くの酒類メーカーでは100mLあたり0.5mg未満のプリン体含有量を「プリン体ゼロ」と定義しているため、こうした製品の品質管理には低濃度領域での高感度な分析が不可欠である。弊財団においても、低濃度領域での精密な分析が可能であるLC-MS/MS法を用いてプリン体の分析を実施している。分析のフローチャートとクロマトグラムを図2及び3に示す。

図2.プリン体の分析法フローチャート




図3.プリン体(アデニン・グアニン・キサンチン・ヒポキサンチン)標準溶液のクロマトグラム
【おわりに】
食品中のプリン体含量データは、製品の品質保証において重要な情報である。消費者が健康を意識して製品を選択する傾向が強まる中、アルコール飲料中のプリン体の分析は、消費者に正確な情報を提供するとともに、食品関連事業者にとっても製品の差別化につながる有効な手段である。
参考文献
- 1)
- 日本痛風・核酸代謝学会ガイドライン改訂委員会,高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン 第3版 (2018)
- 2)
- 公益財団法人 痛風・尿酸財団ホームページ
- 3)
- 金子希代子、福内友子、髙栁ふくえ、山岡法子, プリン体の測定と食事療法への応用
Gout and Uric & Nucleic Acids Vol.43,No.1(2019) - 4)
- 柿木康宏、吉岡俊暁、永富康司、宇山敦生、望月直樹, 親水性相互作用クロマトグラフ
-質量分析計を用いたアルコール飲料中の高感度プリン体分析 食品衛生学雑誌,
55(2),110-116,(2014) - 5)
- 京都市産業技術研究所 研究報告 No.13,32-34,(2023)
https://tc-kyoto.or.jp/app/uploads/2024/01/outcome2022_08.pdf