分析の正しさは感覚ではなく、根拠で示す―ISO/IEC17025入門
分析の正しさは感覚ではなく、根拠で示す―ISO/IEC17025入門
一般財団法人 食品分析開発センターSUNATEC
FQS(Food Quality Solution)室
■ はじめに
「ISO/IEC17025」という言葉を聞いたことはありますか?
分析や検査に関わる仕事をしていると、よく耳にする規格ですが、
「ISO/IEC17025の認定を取得していることが大切」というイメージだけが先行してしまい、
その本当の意味までは意外と知られていないかもしれません。
今回は、ISO/IEC17025の“考え方や役割”を、できるだけわかりやすくご紹介します。
■ ISO/IEC17025とは何か
ISO/IEC17025は、
試験や分析を行う機関が、適格に運営され、かつ妥当な結果を出す能力があることを実証するための要求事項を含む国際規格です。
簡単に言えば、
「この検査機関の分析結果は、世界基準で信頼できます」
と示すための仕組みです。
■ 信頼できる分析結果とは
ISO/IEC17025の価値は、
「認定を取得していること」そのものではありません。
本当に大切なのは、
- なぜその分析結果が得られたのかを説明できること
- 誰が実施しても、同程度の分析結果が得られること
- 万が一、異常が生じた場合速やかに気づける仕組みがあること
- その気づきを検査技能の向上につなげていけること
つまり、
分析結果の裏付けがきちんと取れている状態を維持し、より確かなものにしていくことにあります。
■ 測定値の見方 ー不確かさという考え方
どんな測定にも、わずかなバラつきが存在します。
たとえば糖度が「12.0%」と測定された場合、
実際には少しだけ前後する可能性があります。
ISO/IEC17025では、このバラつきを
「測定の不確かさ」
として表します。
これは、
「どれくらいの範囲でバラつく可能性があるのか」
を明確にする考え方です。
測定値が一定の幅をもつことを理解しているだけで、分析結果の見方や評価の仕方は大きくかわります。
その幅を説明できることが、分析結果の信頼性を支える根拠になります。
■ 信頼性を支える品質管理
ISO/IEC17025では、分析結果が安定して得られているかを日々確認することも重要です。
同じ検査を繰り返し行い、
- 分析結果が管理基準内にあるか
- 分析結果の並びにクセ(連、傾向、周期など)がないか
を確認します。
この積み重ねによって、
- 分析結果の異常の早期発見
- 異常値の原因の追究
- 継続的な改善
が可能になります。
つまり、
「たまたま正しい」ではなく
「常に正しい状態を維持し、より確かなものにすることができる仕組み」が整うのです。
■ 食品分析における意味
たとえば残留農薬の分析。
分析結果が基準値を超えているのかどうかは、
社会的にも大きな意味を持ちます。
だからこそ、
- 比較する分析結果はどのくらいの不確かさをもったものなのか
- 方法は妥当か
を説明できなければなりません。
ISO/IEC17025は、
その説明責任を果たすための土台になります。
■ まとめ
ISO/IEC17025の本当の価値は、
「認定を取得していること」ではなく、
信頼できる分析結果を出し続け、更に技能をより確かなものにする仕組みがあることにあります。
分析の世界では、
“正しさ”は感覚ではなく、根拠で示すものです。
その根拠を積み重ねるための考え方こそが、
ISO/IEC17025の本質といえるでしょう。
■ 検査の信頼性を支えるために
ISO/IEC17025の考え方は、認定取得の有無にかかわらず、日々の検査業務を見直すうえで参考になる視点を多く含んでいます。
たとえば、
- 分析結果の根拠を説明できること
- 手順や判断が特定の担当者だけに依存しないこと
- 異常や変化に気づける確認の仕組みがあること
- 教育や記録を通じて、技能を継続的に高めていけること
といった点は、検査の信頼性を支える基本になります。
食品の安全や品質に関わる検査では、日々の積み重ねが分析結果の確かさにつながります。
この機会に、自社の検査体制や品質管理のあり方をあらためて見直してみるのもよいかもしれません。
SUNATECでは、食品検査で培ってきた知識や経験をもとに、検査室運営や品質管理の見直しに関するご相談にも対応しています。
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