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食品用器具・容器包装の試験検査について

元・東京都健康安全研究センター 食品添加物研究科 容器包装研究室 金子令子 はじめに 食器、調理器具及び包装材は食品と直接接触するため、含まれている化学物質等が溶け出すおそれがあり、それにより食品が汚染されないよう配慮する必要がある。我が国では食品衛生法第16条により有害な物質が含まれ人の健康を損なうおそれがある器具・容器包装を製造販売してはならないとされ、18条により器具及び容器包装の規格基準が定められている。また、おもちゃは乳幼児がなめたり飲み込むことを想定し、含まれている有害物質を摂取して健康を損なうことのないよう規格基準が定められている1)。 1.溶出試験と材質試験 規格には安全性を確認するための試験として溶出試験と材質試験がある。溶出試験は試料から溶け出す化学物質、材質試験は試料中に含まれている化学物質を測定するものである。食品用器具・容器包装は食品に接触する全てのもの、おもちゃは6才未満の乳幼児が使用するものが規格の対象である。容器やおもちゃの材質、種類によりその原料や添加剤など溶出する化学物質が異なるため、それぞれの規格が定められている。  器具・容器包装の溶出試験では食品の代わりとなる溶媒が使用される。食品は種類が多く様々な成分から成っており実際の食品を用いると分析法が複雑になり定量限界も高くなるなどの困難があるためである。そこで食品の性質を大きく分けて、それを代表する溶媒(食品疑似溶媒)を用い、試験操作を簡便化するとともに検出値を比較できるものにしている。pH5以上の食品は水、pH5以下の酸性食品は4%酢酸(食酢の酸濃度)、酒類は20%エタノール、油脂及び脂肪性食品(脂肪分20%以上)は油脂と似た溶出傾向を示すヘプタンを用いる。しかしへプタンは溶出力が強く必ずしも油脂及び脂肪性食品の溶出傾向を反映していないことから、オリーブ油などの植物性油脂を用いる方法が厚生労働科学研究において検討されている。試料にこれら食品擬似溶媒を満たし一定時間放置し試験溶液を得る。溶出条件は使用実態や溶媒の溶出強度を考慮している。  材質試験では材質中に含まれている化学物質を測定する。試料を灰化、溶解、抽出などの前処理操作を行い目的物質を含む試験溶液を得る。  得られた試験溶液中の化学物質を誘導結合プラズマ発光分光光度計(ICP)、原子吸光光度計(原子吸光)、ガスクロマトグラフ(GC)、ガスクロマトグラフ・質量分析計(GC/MS)、高速液体クロマトグラフ(HPLC)等の機器を用い、あるいは比色、滴定などの方法により測定する。 2.器具・容器包装の規制 (1)ガラス、陶磁器、ホウロウ製品 陶磁器及びホウロウ製品には釉薬(うわぐすり)や着色するための顔料などが使用される。顔料として、安価で鮮やかな色のクロム酸鉛(黄色)、硫化カドミウム(黄色)、セレン化カドミウム(赤色)などが使用される場合があり、これらには有害金属である鉛(Pb)やカドミウム(Cd)が含まれている。製造の際の焼成温度が低い製品では、Pb、Cdが溶出する可能性がある。ガラス製品ではPbを添加すると輝きのよいガラスができるため、高級クリスタルガラスにPbが添加されている。  規格は溶出試験のみであり、規制されているのはPb及びCdである。金属類が溶出しやすい酸性の食品擬似溶媒である4%酢酸を試料に満たし、暗所に常温(15~25℃)で24時間放置して、得られた試験溶液中のPb及びCdを測定する。レンゲなどのように満たすことのできない試料は全体を浸し、検出値は面積あたりの量で示される。規格値は製品の形状及び容量、材質及び加熱用調理器具であるかにより異なっている。材質(ガラス、陶磁器、ホウロウ)により化学物質の溶出しやすさが異なったり、加熱用調理器具は高温になるため溶出しやすいなどの理由による。容量の大きい器では小さい器と比較して表面積に対する試験溶液量が多く、溶出したPb及びCdが薄められて濃度が下がるため、規格値は低く設定されている。またPb及びCdを含む顔料がふち部分に使用されている可能性があるため、溶出液はできる限り試料のふちギリギリまで満たす必要がある。2006年、中国製土鍋に1日約4時間、2日間にわたって水を入れ沸騰させたところ鉛がふち部分から検出された。しかし規格の溶出条件と異なるため、違反ではなく自主回収された例がある。 (2)プラスチック製品 ①プラスチックからの溶出物  プラスチックは軽く壊れにくく安価である。また2種以上のフィルムを貼り合わせ多層化することによりそれぞれの特質が付与された多機能フィルム(ラミネートフィルム)を使用することにより保存や輸送に適した利便性のよい包装材を作ることができるため、現在の生活に欠かすことができないものとなっている。プラスチック製品は、石油を原料とする最小単位の化合物(モノマー)を数万~数十万個重合した高分子(ポリマー)に様々な添加剤を加え、目的に合うように成形されたものである。添加剤には、熱や光によって劣化して脆(もろ)くなることを防ぐ安定剤、柔軟性や耐熱性などの性質をもたせる改質剤など様々なものがあり、プラスチックの性能を向上させるために必要不可欠である。ポリマーは摂取しても、分子量が大きいため吸収されずに排泄される。しかしプラスチック製品には添加剤、未反応の原料モノマー、触媒、反応副生成物、不純物、分解物が存在する。これらは分子量が小さいため、食品に溶出し摂取される可能性がある。そのため規格試験により溶出される有害物質の種類や量が規制されている。また溶出物はできる限り少ないことが望ましいことから溶出物の総量の規制がある。試験は目的の化学物質が溶出しやすい食品疑似溶媒を接触面積1cm2当たり2mlの割合で容器に満たし、60℃に保ちながら30分間(ヘプタンのみ25℃に保ちながら1時間)、100℃を超えて使用されるものは95℃30分放置したものを用いて行う。温度の安定のためには、空気恒温槽より水浴が望ましいとされている。試料の片面だけが食品接触面である場合は片面抽出器を使用する。容量や形態に様々な種類があるので適当なものを使用すると簡便である。  材質試験の目的は、材質中の化学物質量を規制することにより食品への溶出量を抑制することである。プラスチックには一般規格と個別規格があり、以下に示す。 ②一般規格  全ての食品用プラスチックが対象であり、表1のように材質試験1項目と溶出試験2項目がある。  材質試験ではPb及びCd含有量を100 μg/g以下に規制しており、Pb及びCd化合物を使用した非食品用のプラスチックが食品用に誤用されることを防止することを目的としている。しかし現在では、Pb及びCd化合物が着色料に使用され不適合となる場合が多い。試験は、試料を乾式灰化した後、硝酸溶液に溶解し原子吸光やICPで測定する。試験操作はまず灰化時に高熱によるPbの揮散を防ぐため硫酸を加えて硫酸塩とする。その後塩酸に溶解し乾固後に硝酸に溶解する。試料中にバリウムが含有されている場合難溶性の硫酸バリウムが生成し、硫酸鉛と結晶構造が類似していることから硫酸鉛が結晶に取り込まれる形で吸着され硝酸に溶けにくくなる。しかし塩酸を加えることにより塩化鉛となり結晶構造が変化することから、硫酸バリウムから遊離し、Pbが溶解する。多量のカルシウム(10mg/g以上)が含有されている試料もPbが溶解しにくい現象が起こるが塩酸を加えることにより解消する2)。しかし数千μg/gのバリウムが含有されている場合、Pb回収率が50%以下になることから、硫酸を使用しないマイクロウェーブ分解による測定法が検討されている3)。またスクリーニングとして蛍光X線分析装置により材質中100μg/g以上のPb及びCd含有の有無を確認することが可能である。溶出試験では重金属と過マンガン酸カリウム消費量が規制されている。重金属の試験には食品擬似溶媒のうち金属が溶出しやすい4%酢酸を用いている。銅、スズ、ヒ素などもPbとみなし、1μg/ml以下という規格になっている。過マンガン酸カリウム消費量の試験は、水を用いて行う。過マンガン酸カリウムは有機化合物を酸化する性質を持ち、溶出した有機化合物の量に比例して消費量が増加する。従って過マンガン酸カリウム消費量の値は、有機化合物の溶出総量の指標とされる。 溶出の可能性がある添加剤には多くの種類があり、それぞれを同定し測定することは難しいことから、総量として10μg/ml以下という規格になっている。また過マンガン酸カリウム消費量は必ずしも有機物量を反映していないとして全有機炭素量(TOC)による検討の報告がある4)。 ③個別規格  材質によりそれぞれ特有な化学物質が溶出する可能性があるため、プラスチックの種類別に定められている規格である。現在、食品に使用されることの多い16種に個別規格がある。蒸発残留物量(主に30μg/ml以下)は16種すべてに定められており、溶出される不揮発性溶出物(無機物質が多い)の総量の指標とされる。この溶出に用いる食品擬似溶媒は使用実態に即したものを使用する。溶媒の蒸発に水浴ではなくホットプレートを使用する場合は100℃以上にならないよう注意が必要である。その他表2のように、16種それぞれに有害な原料モノマー及び添加剤が規制されている。  ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメチルペンテン(PMP)、ポリビニルアルコール(PVA)の個別規格は蒸発残留物量のみである。PEは柔軟な性質を利用し弁当用小分け調味料容器、保存容器のふたなどに使用されているが、耐熱温度が70~90℃と低いため、電子レンジ加熱により変形する。PPは耐熱温度が120~150℃と比較的高く、スーパーなどで弁当や惣菜の電子レンジ可能な容器に使われている。炭酸カルシウムやタルクなどの充てん剤を添加してさらに耐熱性を高めたものもある。PMPは耐熱性が高く(融点240℃)、電子レンジ用容器、コーヒーメーカーなどに使用される。PVAはエチレンとの共重合体であるエチレンビニルアルコールポリマーフィルムとして使用されることが多い。酸素バリア性があるためレトルト食品用包装材などのラミネートフィルムの中間部分に使用され食品接触部分ではないことが多い5)。  フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂は、原料モノマーのフェノール(5μg/ml以下)とホルムアルデヒド(陰性:4μg/mlの溶液を水蒸気蒸留して試験を行った時NDとなるため4μg/ml以下が陰性とされている)が溶出試験として規制されている。 メラミン樹脂はちゃわん、皿などの食器、フェノール樹脂は汁椀の素地(表面ウレタン樹脂塗装が多い)に使用され、ユリア樹脂は食品用途に使用されることは少ない。メラミン樹脂製品は電子レンジで加熱すると樹脂が劣化して分解し、ホルムアルデヒドの溶出量が増加する。そのため電子レンジで加熱をしないよう注意書きがある場合が多い。  ポリ塩化ビニル(PVC)は、材質試験として原料モノマーの塩化ビニル(1μg/g以下)、安定剤ジブチルスズ化合物(50μg/g以下)、可塑剤クレゾールリン酸エステル(1mg/g以下)が規制されている。PVCは密着性がよいためスーパーなど業務用ラップフィルムに使われており、柔らかくするための可塑剤を多量(5~25%)に使用している。原材料一般の規格により油脂性食品に接触するPVCから可塑剤のフタル酸ビス(2-エチルヘキシル)が溶出してはならないと定められている。PVCは密着性がよいためスーパーなど業務用ラップフィルムに使われている。PVCのラップフィルムは焼却時にダイオキシンが発生する可能性があることから、最近では業務用にエチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)が使用されている6)。また可塑剤の入っていないPE、耐熱性の高いPMP、PE/ナイロン、PE/PPのように耐熱性の材質をラミネートしたラップフィルムなども市販されている。  ポリ塩化ビニリデン(PVDC)は家庭用のラップフィルムに使われている。材質試験として、原料モノマーの塩化ビニリデン(6μg/g以下)及び安定剤のバリウム(100…

水分の試験方法

一般財団法人 食品分析開発センターSUNATEC 第一理化学検査室 水分とは 水分は、食品分析における最も基本的な分析項目のひとつである。食品の栄養成分の表示にあっては、炭水化物、糖質の差し引き計算や熱量への換算にその正確さが大きく影響する。  食品中の水分含量は1%以下(凍結乾燥された加工食品など)から99%以上(茶の飲料など)までさまざまであるうえ、共存成分は複雑であり単一ではない。自由水として存在する場合と結合水として存在する場合とがあり、通常、前者は水溶液としての蒸気圧を示し、比較的蒸発しやすい。後者は結晶水として、あるいはたんぱく質や多糖類などの高分子と水素結合した状態で存在しているため比較的蒸発しにくい。従って、食品群毎に乾燥条件を最適化したうえで分析することが重要である。  分析に用いられる代表的な方法は、加熱乾燥法とカール・フィッシャー法である。その他にも蒸留法、電気水分計法、近赤外分光分析法、ガスクロマトグラフ法及び核磁気共鳴吸収法があるが、今回は加熱乾燥法とカール・フィッシャー法について詳しく紹介する。  紹介前に、加熱乾燥法は古くから多くの食品に適用されている方法であり、加熱による重量減量分を水分と定義し、極力、水分のみが蒸発する条件を設定している。また、日本食品標準成分表や健康増進法における「栄養表示基準」(平成11年4月26日 衛新第13号)において食品毎にさまざまな乾燥条件が設定されており、最も幅広い食品に適用される方法であるということを知っていただきたい。 分析方法 1.加熱乾燥法  本法は、加熱乾燥前後の重量測定を基本としているため簡便であり、多くの食品に基準法として適用される。 1)常圧加熱乾燥法  一般に強制循環通風式の乾燥器を用いて、対流、伝導、輻射によって加熱を行い、一定温度で一定時間乾燥した際の試料の重量減量分を水分として分析する方法である。  食品の水蒸気圧を高め、周囲の雰囲気の水蒸気圧を相対的に低くすることによって水の蒸発を進行させるため、高温になるほど効率が高くなる。しかし、熱に不安定な成分を含有する食品も多く、それらは加熱温度が高くなるに従い成分間の反応、分解により揮散量が増大し、過大の測定値となってしまう。  ①常圧加熱乾燥法   対象:穀類、種実類などの粉末状のもの、比較的水分量の少ない食品に用いられる。  ②常圧加熱乾燥助剤添加法   対象:粘質状、液状、ペースト状などの食品に用いられる。 ※乾燥助剤は、水分含量が高いことに加えて、糖類などの含量も比較的高い試料の表面積を広げ、効率的に乾燥させるために加えられる。 2)減圧加熱乾燥法  乾燥器内を一般に1~10 kPaの減圧度にすることで、水分を蒸発させる方法であり、乾燥温度が100 ℃以下でも水を除去できる。  一般的に対流による加熱はごく小さくなり、壁からの伝導熱が主体となるため、乾燥器内の温度分布が不均一になりやすい。そのため、壁に近い部分を避け、中央付近を使用することが望ましい。  常圧加熱乾燥法に比べて加熱温度を低く設定することが可能であり、同時に空気を除去することにより、加熱乾燥中の試料の酸化による重量変化を最小限に抑制できる。しかしながら、一般に乾燥時間が長く、操作もいくらか煩雑であるので減圧加熱乾燥法と同一分析値が得られる常圧加熱乾燥法の条件が定められた食品にあっては、必ずしも減圧加熱乾燥法を適用しなくてもよい場合もある。  ①減圧加熱乾燥法   対象:粉末スープ、クッキーなどの加熱によって変化しやすい食品に用いられる。  ②減圧加熱乾燥助剤添加法   対象: 野菜類、果実類、魚介類など比較的水分の多い食品や粘質状、液状、ペースト状などの食品のうち、加熱によって変化しやすい食品に用いられる。…